物の貸し借りに関する法律には、民法がありますが、民法は貸し借りの契約について目的物を限定していません。
また、民法は広く浅く定めている法律なので、建物のような特殊なことについては民法よりも優先される法律があります。
それが「借地借家法」という法律で、借地借家法は建物の貸し借りや、土地の貸し借りについて定めた法律です。
この借地借家法に規定があることについては、民法よりも借地借家法が優先され、借地借家法に規定がない場合に民法が適用されます。
借地借家法
民法では、契約期間が終了すると、更新については貸主と借主が合意した場合に可能です。
なので、貸主が契約の更新を希望しないと拒否すれば、契約はそこで終了になります。
もし、この民法の規定を建物の貸し借りについても適用してしまうと、賃貸生活の人はいつまで経っても住む場所が不安定です。
そこで生まれたのが「借地借家法」という建物の貸し借りについての法律です。
普通の借家契約
一般的な借家契約だと、多くの場合は2年毎に更新が必要な賃貸借家契約です。
2年の契約期間が満了した場合は、更新料と保険料を支払って新たに契約を更新することができます。
2年の期間が終了しても、再度2年の賃貸借契約を更新することは一般に行われています。
仮に貸主が2年の契約が満了したからといって、借主に出て行ってもらえるかというと、なかなかそうはいきません。
借地借家法には、普通の借家契約で貸主から更新を拒絶する場合は、更新を拒絶するだけの正当事由が必要とされています。
この正当事由が認められるケースは非常に少なく、過去の判例を見てもよっぽどのことがない限り、貸主の正当事由は認められていません。
つまり、貸主が一度部屋を貸してしまうと、よほどのことがないと更新の拒絶が認められないので、立退料を用意するとか、引っ越し費用を貸主が持つとかして、借主に納得して出て行ってもらうことになります。
ちなみに最近はやりのサブリース契約は、貸主が投資家で、借主が不動産業者になります。
サブリースというのは、家賃を保証してもらう代わりに一括で不動産業者に貸す契約です。
一般的には、投資不動産は自分で家賃を設定できないと購入者が嫌がって現れません。
そこで、投資家がサブリース契約を解約したがるのですが、借地借家法で貸主からの解約は正当事由が必要となっているので、解約するには相当の費用が必要になります。
また、空室率が高かったり、周りよりも賃料が高い場合は、不動産会社にも賃料引き下げの権利があります。
これが少し前にレオパレスで問題になったケースです。
定期借家契約とは
普通借家契約では、貸主が一度部屋を貸してしまえば、家賃の滞納などがない限り、なかなか返還されないことになります。
例えば、転勤の期間だけ部屋を貸したい場合があっても、返ってこなければ貸すことができません。
こういった場合に対処するためにできたのが「定期借家契約」です。
定期借家契約は、2000年に始まった比較的新しい法律です。
定期借家契約では、契約期間の更新がありません。
2年の契約を締結した場合は、2年の期間満了とともに契約が終わりになります。
普通借家契約だと自然と更新するのを思えば、部屋を貸す方にとっても安心です。
ただし、契約の更新がない以上、他の物件と同じ家賃では借主が不利です。
なので、周りよりも安くするといったことも必要です。
定期借家契約は書面が必要
定期借家契約では、借家人に対して書面の交付が義務付けられます。
また、重要事項説明でも説明する必要があります。
書面には、「いつまでの契約」か、「更新しないこと」などの説明や文言が必要です。
ちなみに普通借家契約では、1年未満の契約をすると期間の定めがない契約になりますが、定期借家契約では1年未満の契約も有効となります。
定期借家権のまとめ
定期借家契約は、他の借家契約とは違って一定期間のみの賃貸借契約です。
似たような契約に定期借地契約がありますが、こちらは土地の賃貸借契約になります。
一般的な賃貸借契約は、2年間の契約です。
普通の賃貸借契約では、2年の契約の終了が近づくと不動産管理会社から契約更新の通知がきます。
しかし、定期借家契約の場合は、契約の更新がなく、期間満了とともに契約は終了します。
更新ができないことから他の賃貸借契約よりも安い相場で借りられることもあるようです。
所有者が転勤の時や建て直しの物件などで募集をかけているのを見かけます。
所有者が転勤した場合であれば、分譲マンションや一戸建てが多かったりしますので、一般の賃貸住宅よりも設備が充実してることも期待できます。