私が不動産業界で働くことになったのは大学時代ですが、この時に働かせてもらった会社では賃貸業務をメインに扱っていました。

その後、売買専門の不動産会社に転職することになり、独立後に再び賃貸を扱うことになりました。

 

賃貸の管理をしていると、家賃を滞納する人が必ずいます。

最近は、連帯保証人をつけずに必ず保証会社を付けてもらうという管理会社が増えています。

保証会社を付ければ、借主が家賃を滞納しても肩代わりしてくれるので、連帯保証人との面倒な手続きがありません。

また、借主にとっても、連帯保証人を探さずに済むメリットがあります。デメリットは保証料の分費用がかかるということです。

賃貸物件で借主から「滞納家賃を敷金から引いといて」は認められない

敷金と礼金がゼロのいわゆる「ゼロゼロ物件」というものがワンルームの間では主流になりつつあります。

貸主にとってうまみはありませんが、借主にとっては初期費用を安くできるので有利です。

ゼロゼロ物件の登場は、早くお客さんを見つけたい貸主の思いを表しています。

 

最近は、都市部でも空室率の上昇が見られ、半分以上が空室というアパートもあります。

神奈川県でも郊外にいくと、新築でも入居者が見つからないという話を聞きます。

 

不動産投資は投資ですから、貸主にとっては早く入居者を見つけたいのが心情です。

この結果、あまり審査をせずに賃貸契約を結んでしまい、家賃滞納のトラブルとなるわけです。

 

以前、借主から貸主に対して「今月は何かと物入りだったので敷金から引いといてくれないか」というお願いがあったことがありました。

しかし、敷金は借主が貸主に預ける担保を意味しますから、これを認めると後々トラブルに発展するリスクがあります。

 

貸主からはOK

敷金の目的は、家賃や物件を壊したりしたときの担保として借主から貸主に預けるというものです。

なので、借主が家賃を支払わないから敷金から不足分をあてることは敷金の性質上問題ないといわれてます。

 

つまり、滞納した家賃を敷金から差し引くことは、貸主からならOKということになります。

 

借主からはNG

しかし、お金が工面できないからといってその都度、敷金から取り崩していたのでは敷金本来の目的が達成されなくなります。

そのため、法律では、借主から家賃の不足分を敷金からあてるよう依頼することは認められていません。

 

つまり、借主から滞納した家賃を敷金から差し引くという提案はNGということになります。

 

あとは交渉次第

貸主の中には、家賃が遅れても1か月なら問題視しない人もいます。

1か月程度の遅れなら、払える範囲で毎月の家賃に上乗せしてくれればいいという貸主もいます。

 

滞納が何か月にもなれば、賃貸契約を解除されても借主は文句を言えません。

テレビドラマを見ていると、1日遅れただけで部屋から追い出されてまいますが、1か月程度では普通は認められません。

というより貸主であっても、借主に無断で勝手に部屋に入るのは違法行為になってしまいます。

 

裁判になると時間がかかるので、遅れた分を返済してくれれば問題ないう貸主は多かったりします。

滞納分の家賃は返さなくていいから、部屋を出て行くように言われることも多いです。

 

家賃滞納の常習者

ゼロゼロ物件では、空室にやっと入居者が決まったとしても、その入居者がいろいろなところで家賃を滞納して追い出され人だったなんてこともあります。

入居直後に家賃を滞納する人は、家賃滞納の常習者という可能性も考えられます。

家賃滞納者は、消費者金融から借金をしていることも多かったりします。

当社のお客様にはいませんが、世の中には最初から家賃を支払うつもりがないなんて悪質な滞納者もいるそうです。

 

ドラマのように家賃を滞納したからといって、貸主が勝手に部屋に入って荷物を部屋から出したり、部屋の鍵を強制的に変えたりすれば、住居侵入罪として捕まってしまいます。

裁判に訴えるというケースがありますが、裁判だと時間がかかり過ぎるので、一般的には貸主と借主の話し合いによって借主に出て行ってもらうことが一般的です。

 

フリーレントとダブルパンチ

フリーレントとは、一定期間の間家賃が発生しないことです。

最近は、早く客付けしたいためにフリーレント物件として募集する貸主も増えてきました。

 

例えば、フリーレント1か月という物件であれば、最初の1か月は家賃が発生することなく入居できるということです。

この場合は、2か月目から家賃を支払うことになります。

 

フリーレント物件の契約では、1年以内の解約は違約金として1カ月かかるといった特約が付されることが一般的です。

ただ、悪質な滞納者には滞納家賃を請求しても支払ってくれることは期待できませんん。

 

おわりに

賃貸業務を経験してから10年以上経っていますが、その間に賃貸業界も随分と変わったと思います。

賃貸と売買では多少の違いはあるものの、賃貸は売買ほど物件調査については、調べることはほとんどありません。

 

知り合いの不動産営業マンは、どうせ一件の契約なら賃貸より売買の方がいいと言ってました。

でも、賃貸と売買とでは、物件を調べることも気を使うことについても全然違います。

というよりも、賃貸で役所調査は行いません。

賃貸では、あまり役所調査とか物件調査をするという話は聞きません。

 

賃貸だと、同じ物件であれば、重説と契約書のひな型ができてることが多いし、法務局以外でやることが思い浮かびません。

ほとんどの会社は、法務局での調査もしてないという話も聞き、賃貸専門の営業さんには、物件調査自体知らないという話も聞きます。

賃貸と売買で同じくらいの労力が必要なら、確かに賃貸は手間ばかり多いということになります。

しかし、売買の機会ってそんな多くありません。